ヨーロッパ視察

2006年3月26日(月)~4月5日(金)
民主フォーラムの有志で、11日間の海外視察を行いました。今回の目的は、「本場のグリーンツーリズムの実情をさぐる」ということです。

4月3日(火)午前中
穀物生産農家の視察(セーヌ・エ・マルヌ県グリズノワ村)
お話し:農場主 シャト氏
我が農場は耕地面積約150haで、主な栽培作物は小麦、大麦、菜の花(なたね)、トウモロコシそして民宿です。息子とふたりで経営していて、妻は看護師として働いています。ひとり雇うと赤字になってしまうので、家族経営で民宿まで営んで仕事はたくさんありますが、それでも先祖代々の土地を守っているという喜びとプライドがあります。収入としては、私たちがあげる農業収益として月に1万6000フラン、妻の収入が1万2000フランです。

部屋は4部屋あり、B&B(1泊朝食付き)形式なので、夕食は近所のレストランでとってもらっています。料金は1泊2名で40ユーロ、3名で56ユーロ、4名で69ユーロ、5名で81ユーロとなっています。2泊される方が多く、パリ近郊からのお客さんは約5%、約40%は外国からです。お客さんはリピーターが多いので、利用される方は満足してくださっているのでしょう。


 Q&A
質問:奥さんなしではやっていけないのでは(笑)?
回答:外で働きながらですが、朝食の準備は妻がしてくれています。彼女の焼くパンが絶品です(笑)。
質問:民宿を始めて何か変わったか?
回答:いろいろなひとが訪れてくれるので、視野が広がりました。とてもやりがいがあります。
質問:後継者は?
回答:息子がついでくれたらうれしいです。

4月3日(火)午後
グリーンツーリズム視察
(フランス セーヌ・エ・マルヌ県観光局)
お話し: マック・ゲネゴーロ氏
まず、グリーンツーリズム(以下GT)は50年の歴史しかない新しい観光の形態で、その地域に古くからある建造物、文化、風習、生活そのものを見てもらい、農村で休暇をのんびり過ごしてもらおうというものです。現在、フランスでは人口の約80%は都市部に集中しており、庭が持てない、緑に触れる機会がないといった状況ですから、都市住民にとって農村地帯に戻っていい空気を吸うことはとても重要です。パリのとなりに位置するセーヌ・エ・マルヌ県は、ナポレオンの城といわれた「フォンテンブロー宮殿」など見どころも多く、都市部からは30分~1時間で到着することができます。人口110万人を抱えるパリに隣接しているということは、大きなビジネスチャンスでもあるのです。

フランス95県に「メゾン・ドゥ・ツーリズム」とよばれるツーリズムセンター(観光局)が配置されています。センターの機能としては、自然そのものを利用した旅行商品の開発・販売、地域資源の発掘から地域おこしへとつなげています。
GTのおこりとしては、1950年代に当時ECの共通農業政策(CAP)への移行のなかで、小規模農家が大規模農業へと効率化され小規模農家の離農が進み、農村地帯の荒廃を懸念した政府が、最初は生活困窮者のために空き農家を無料で貸し出したことに始まりました。
セーヌ・エ・マルヌ県では現在約300軒の貸し別荘やB&Bがありますが、週末の滞在利用の他に結婚式や企業の研修などに使われることも多いので600軒ほどのニーズはあると見込まれています。


GTの問題点としては、農村部の景観維持や生活向上のために始まった「ビジネス」ではありますが、ビジネスばかりが強調され、最近は外部からの参入も多くあります。土地や古い離農家の価値も破格に上がっています。利益を生むのは悪いことではありませんが、「農村のもっているよさ、資源を生かす」という哲学をもちながら、本来のGTの在りかたを追求していくことが大切です。また、「安いホテル」という概念が、民泊間の価格競争を生み、ダンピングがおこったりもしています。このような問題点をふまえながら、一定のサービス、クオリティーの基準を保っていく必要性があります。

 Q&A
質問:300軒もあり、利用者のメリットは?
回答:現役の農家や、農家だった家を改築して宿泊施設にしているので建物や庭などの空間が広く、料金も安いので利用者のニーズに合わせた使い方ができるということです。
質問:観光に占めるGT収益の割合は?
回答:そういう質問は初めてです(笑)。統計はとっていません。観光とGTを切り離しては考えていないからです。民宿を営んでいる農家では、おのおのの収益が出ていますが。
質問:食品衛生法や消防法などの規制や制度は?
回答:そういった規制はありません(食文化の違いか?)。ただ、協会指定の民泊は検査員が客を装って各宿に不定期にコントロールに入る、いわゆる抜き打ちチャックがあり、一定の基準が保たれています。
質問:日本からの受容もあるか?
回答:(通訳者が)あります!京都、奈良、北海道以外に東北というのは穴場でなかなか行けない場所。その魅力をアピールすれば、行きたいひとは多くいるはずです。



ゆさみゆきの感想…
農家民宿を経営することによって、視野が広がり、誇りを取り戻しているということが印象的でした。GTは農村のもつ本来の文化や歴史、生活をそのまま体験してもらうチャンスです。日本のように変な規制がじゃまをしておらず、制度がバックアップしています。その規制をとっぱらってあげて、GTを推進していけるようなお手伝いするのが私たちの役割であると感じました。
日本のGTはゲネゴーロ氏の言う「哲学」から進んでいます。ビジネスも大切だけど、やっぱり方向性は間違っていないと確信しました(もちろんお金になる=やりがいにつながる、という点ではビジネスも大切!)。
海外から日本へ、特に東北に来てみたいという旅行者に対して、みやぎのGTを発信していこうと決意を新たにさせられた海外視察でした。