地方議会も産休を整備しよう
2001年3月24日
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衆院議員の橋本聖子さんの出産をきっかけに昨年、参院規則が改正され、議員が出産を理由に議会を休みやすくなった。よかった、と思っていたら、今年に入って衆院でも水島広子議員が妊娠を公表し、同様の規則改正が行われた。私は、宮城県議会でも実現したいと去年から取り組んでいるが、壁は厚い。
議員の産休制度は、単に「女性の健康と権利」という問題だけでは終わらない。
21世紀を迎え、各地で住民自治の成熟がますます求められるようになっている。市民の生活実感を持った議員の政策提言や地域の問題解決能力が重要性をましている。地域や業界の有力者だから、というより、さまざまな事情や仕事のある普通の人の感覚が、議会にも必要になってきた。
出産や育児、家族の介護など、だれもが生活をする上で体験する。そのような事情を抱えていても、議員になることができる環境を整えようとしなければ、議会を変えることはできない。議員の産休制度は、その第一歩であり、地方議会でこそ実現しなくてはいけない課題だと思う。
私たちの議会内の会議が提案している要点は、
- 会議規則の「欠席の理由」の項に「出産、家族の介護や看護、育児のため会議に出席できないときは…」と、欠席理由に「出産」などを明記し、認知する
- 授乳室、託児室として議員休憩室を開放する
- 産休中は、文書による質問を認める項を会議規則に設ける
スウェーデンやノルウェーなど、女性議員の多い国の議会では、産休などで出席できない議員に代わって意思表示をする、代理議員や代理投票などの制度すらある。「文書による質問」を提案の中に入れたのは、議会に出席していなくても最低限の仕事をするシステムとして必要、と考えたからだ。
昨年九月議会に続いて、今年の二月議会でも議会運営委員会で議論したが、「産休は議員になじまない」「(理由を明記していない)現在の規則でも休むことは出来るではないか」といった反応も多く、先送りされているのが現状である。
国会で早々に規則改正が行われたのに対し、地方議会でこうした意見が出る背景には、「地方議員は非常勤の特別職」である、とする地方自治法のとらえ方もかかわると思われる。非常勤職に産休制度はなじまないということなのだろうか。
私は大学を出て、タウン情報誌に就職し、テレビ局のリポーターなどをしていた1995年、誘われて県議選に出ることになった。30歳を超えたばかりで未婚だった。母からは、「県議なんかになったら結婚もできない。普通に結婚し、子どもを産みなさい」といわれた。しかし、私は、普通の生活を通じて県政に意思を伝えたいと考え、公約にも「任務中に結婚、出産、育児をします」と掲げた。
当選の翌年に結婚し、その翌年出産、二期目の選挙の翌年、もう一人生まれた。最初の出産の産休期間と知事選、参院補選が重なった。すると「彼女は何をしているんだ」と言った声も聞こえた。ストレスで母乳がでなくなった。こうしたことの続く議員生活の日常は非常勤という言葉とはなじまない実態である。
私は、議員の産休制度を考える全国のネットワークを立ち上げる準備を始めているが、群馬県議会で妊娠七ヶ月の議員が取り組むなど、各地で動きが始まっている。
各地の地方議員で、若い世代の進出が続いている。知事選挙でも、既成の政治とは縁のなかった人物の活躍が話題になっている。政治活動、議員活動のあり方が問われている。地域のことは地域で決めるシステムつくりの観点から、議員の産休問題をとらえて欲しいと思う。
(2001年3月24日 朝日新聞掲載)